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名古屋高等裁判所 昭和43年(行コ)6号 判決 1969年8月26日

岐阜市若宮町一丁目一二番地の三

控訴人

安田金治

右訴訟代理人弁護士

平井勝也

右訴訟復代理人弁護士

関根栄郷

名古屋市中村区笹島町一丁目二二二番地

被控訴人

名古屋国税局長

大田満男

岐阜市千石町一丁目一五番地

被控訴人

岐阜北税務署長

在間尚志

右被控訴人等指定代理人

松沢智

右同

中原勇

右同

山下武

右同

老籾貞雄

右当事者間の昭和四三年(行コ)第六号贈与税賦課決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人名古屋国税局長が控訴人に対し昭和四一年一一月一一日付でなした昭和三九年度分贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分に対する審査請求を原判決添付別表のとおり原処分の一部及び無申告加算税の賦課決定処分の一部のみを取り消し、他を棄却した決定は棄却決定の部分に限りこれを取り消す。被控訴人岐阜北税務署長が控訴人に対し昭和四〇年一二月一〇日付でなした金二五八万六、三六〇円の贈与税決定及び金二五万八、六〇〇円の無申告加算税の賦課決定処分(但し名古屋国税局が昭和四一年一一月一一日付でなした裁決の一部取消部分を除く)は、これを取り消す。訴訟費用第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴人等の指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び書証の認否は、控訴代理人において、甲第一ないし第四号証の各一、二、第五ないし第七号証、第八号証の一ないし四、第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証の一ないし五を提出し、当審証人近藤留、同安田浅之助の各証言を援用し、乙第一ないし第九号証の成立を認めると述べ、被控訴人等の指定代理人において乙第九号証を提出し、甲第八号証の一ないし四、第九号証、第一一号証の一ないし五の成立は不知、甲第一〇号証の一、二は官署作成部分のみ認め他の部分の成立は不知、爾余の甲号各証の成立を認めると述べた外は、原判決事実摘示と同一(但し原判決五枚目裏九行目の「昭和四十一年三月十二日」とあるのを「昭和四十年二月十二日」と訂正する)であるから、これを引用する。

理由

一、先ず控訴人の被控訴人名古屋国税局長に対する請求について判断する。

控訴人は、同被控訴人がした昭和四一年一一月一一日付裁決の一部取消を求めているが、裁決の取消理由として主張するところは、すべて被控訴人岐阜北税務署長が昭和四〇年一二月一〇日付でなした原処分である贈与税決定及び無申告加算税の賦課決定処分についての違法であつて、裁決固有の違法を主張するものではない。ところで、行政事件訴訟法第一〇条第二項によれば、処分の取消の訴とその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消の訴とを提起することができる場合には、裁決の取消の訴においては処分の違法を理由として取消を求めることができないものである。従つて、控訴人の被控訴人名古屋国税局長に対する請求は、主張自体理由がないから、他のことについて判断するまでもなく失当として棄却を免れないものである。

二、次に、控訴人の被控訴人岐阜北税務署長に対する請求について審按する。

控訴人が昭和三九年三月一八日その父安田浅之助より金九四万一、〇六二円の贈与を受けたことは当事者間に争いがない。また、成立に争いのない乙第一ないし第八号証によると、同被控訴人が主張する事実(原判決五枚目表七行目の「株式会社」より同六枚目表四行目の「のであり」までに記載、但し同六枚目表一行目の「右手形借入金との差額」とあるのを「相殺後の残額」と訂正する)を認めることができる。甲第九号証中、控訴人が株式会社十六銀行今沢町支店に対し昭和三三年三月二〇日現在梅田智一外五名の架空名義で六口合計金五一四万五四一円の定期預金を有していた旨の記載並びに当審証人近藤留、同安田浅之助の各証言中、昭和三九年三月一二日解約された株式会社十六銀行今沢町支店の梅田智一外五名の架空名義の定期預金六口合計金五四九万六、〇一六円(利息を含む)が控訴人の所有である旨の供述部分は、控訴人において右架空名義の定期預金が安田浅之助の所有であることを認めていること(原審における昭和四二年一二月二三日午前一〇時の第六回口頭弁論期日に陳述された控訴人の第一準備書面の二の(2))及び成立に争いのない乙第九号証に照し、いずれも採用し難く、他に前記認定を左右するに足る証拠はない。

前記認定事実によると、安田浅之助所有の架空名義定期預金が解約されてその解約金五四九万六、〇一六円が控訴人名義の普通預金に預け入れられた後は控訴人において右金員を自己の資金として運用していることが明らかであり、控訴人は、右解約金を控訴人名義の普通預金に預け入れた時即ち昭和三九年三月一二日に安田浅之助から金五四九万六、〇一六円の贈与を受けたものと推認するのが相当である。

そうとすると、被控訴人岐阜北税務署長が、控訴人において安田浅之助より昭和三九年三月一二日に金五四九万六、〇一六円、同月一八日に金九四万一、〇六二円の各贈与を受けたものと認定し、右贈与金額の範囲内である金六二一万一、五五二円を課税価額(同被控訴人は金六三七万五、二七六円を課税価額として課税処分をしたが、控訴人の審査請求により被控訴人名古屋国税局長において課税価額を金六二一万一、五五二円と認定し、原処分の一部を取り消したものである。このことは弁論の全趣旨から明らかである)とし、控訴人に対し昭和四〇年一二月一〇日付でなした昭和三九年分贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分には控訴人主張のような違法の点はなく、他に右各処分を取り消すべき瑕疵も認められないので、控訴人の被控訴人岐阜北税務署長に対する請求も失当として棄却を免れない。

三、以上の次第ゆえ、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 成田薫 裁判官 布谷憲治 裁判官 福田健次)

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